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 獣医師は時にCからの交流も行うことになります。先ほど出てきたクライアントのクレームなどは獣医師のACに向かいますので、獣医師は「申し訳ございませんでした」とクライアントのCPに向けて相補交流をすることもあります。また「怒鳴られて怖いと思いました」など相手の冷静な判断を期待して気持ちを訴える獣医師FC⇄飼い主Aの交差交流を用いることがあるかもしれません。獣医師‐飼い主間でFC⇄FCの交流は、互いに「飼い犬の○○ちゃん、可愛いですね」「うん、かわいいんですよ」と感情を率直に伝えあうことで、治療関係が親密になり、より人間的にビビッドな治療関係を構築することに役立つこともあります。獣医師のFCが活性化されていないと仕事のモチベーションを保つことが難しくなります。しかしながら、獣医師のFCは、後述する感情労働の影響を受けて、素直に感情を出すようなFCの働きが制限されることもあります。

 獣医師がACを働かせ、飼い主に話を合わせることが必要になることもあるでしょう。適切なACの活性化は、治療関係を良好に保つことに役立ちます。しかし、ACが過度に働いている診療場面は、飼い主との交流で否定的な問題が生じていることが多いだろうと推察されます。獣医師のACが過度に働いている診療場面は、謝罪等の交流と無用な遠慮のある交流が想像できます。獣医師の過剰なACが働いている場面は、獣医師の依存的・妥協的な面が表面化し、飼い主に頼りないとみられている場面が考えられ、円滑に進行している診療場面が想像しにくいと考えられます。また、飼い主からのクレームへの反動の場面でもACが優位になるでしょう。飼い主からのクレームで、獣医師‐飼い主間でAC ⇄CPの交流が続いていた場合、ACで謝罪していた獣医師がとうとう限界に達し、「もうこれ以上我慢できない」と反動的なACが出てくることもあるでしょう。飼い主がAC優位になりやすい関係上、獣医師はACの機能を活性化することができないことが影響していると考えられます。

 獣医師のCからの交流は、獣医師CP⇄飼い主ACの相補交流をとりやすい関係から限定的な場面に限られてくると考えられます。しかし、適度なFCやACが働いていないと仕事を楽しめず、飼い主の状況や性質に合わせることができないので、獣医師は適切にFCとACを活性化していなければならないでしょう。

獣医師のCからの交流

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