獣医師がこのような社会や人間心理が関わる問題に直面する最前線が診察室です。そして獣医師がこれらの問題に対応できる機会も診察室で訪れます。よって、獣医師が診察室でどのように立ち振る舞い、どのように会話し、どんな態度を示すのかということは、問題へのアプローチとして重要になってくると考えられます。獣医師の立ち振る舞い、会話方法、態度によって、問題を解決できるようになるとも考えられます。

 ここで医療と異なる獣医療の治療構造の特徴について整理しようと思います。言うまでもなく、動物病院の診察室には、治療者である獣医師と治療対象であるペット、そしてその飼い主という3者が存在する点が医療とは大きく異なります。また、治療主体であるペットは、ふつう自ら望んで動物病院に来たわけでなく、飼い主の意志で連れてこられています。つまり、治療の希望と決定権は、治療主体のペットではなく、治療客体の飼い主に存在しています。そして、治療客体の飼い主と治療者の獣医師の会話的交流によって治療契約が結ばれ、治療が決定してゆきます。治療主体のペットの治療が、第2者である治療者の獣医師と第3者である保護責任者の飼い主の考えや思いが反映し決定されてゆくわけです。このような獣医療の治療構造の特徴から、獣医療やその問題の生成や解決に獣医師と飼い主の人柄や関係性が大きく影響すると捉えることが出来ます。もちろん、飼い主とペットとの関係、ペットと獣医師の関係も治療構造に深く関係してゆきます。

獣医療の治療構造

獣医師と飼い主の人柄や関係性

 獣医師と飼い主の人柄や関係性が獣医療に大きな影響を与えるということは、獣医師と飼い主の性質やコミュニケーションのあり方の理解が社会や人間心理がかかわる獣医療問題を解くカギと考えられます。飼い主はペットを治療するために動物病院を訪れていますから、獣医師にできることは獣医師自身と飼い主の性質とコミュニケーションのあり方を理解し、改善するということになると思います。社会や人間心理がかかわる獣医療問題を解決し、治療を円滑に、そして飼主とペットの最大幸福を実現するために、獣医師は適切な自己認知とコミュニケーション方法を身につける必要があるということになります。

 ここで、このウェブサイトで紹介する交流分析(Transactional Analysis:TA)が力を発揮してきます。交流分析を理解し実践すれば、適切な自己認知と他者認知、コミュニケーションの方法を身につけることが出来ます。獣医療をとりまく社会や人間心理がかかわる問題に対処してゆくために、交流分析は、うってつけの心理理解の方法論です。