人生態度(life position)とは、私が他人をどのように感じ考えているのか、具体的には自分や他人に対して「OK」と感じているのか「OKでない」と感じているのかの人生における基本的な構えのことを言います。人生態度は幼児期に親から受けるストロークの種類とその量によってよって決まってくるといわれています。人生態度が一度決まってくると、人はその基本的な構えを強化して維持しようとし、その人生態度を持って世界を自分の予測可能な状態として捉えようとします。

 人生態度の形成は乳児期のころから始まっています。乳児期の子供は、世界のすべてと一体で母親も自分も一体である全知全能感を有すると言われています。おっぱいが欲しい時は抱いておっぱいをくれ、おむつが汚れたときは替えてくれるような、養育者(特に母親)の適切なお世話(ストローク)によって、乳児期の子どもは、母子一体感を体験し「自分も守られてOKだし、環境(母親)もOKである」ことを体得してゆきます。こうして自分もOK、他人もOKの基本的信頼が形成されると考えられています。この時期の基本的信頼の形成に障害があると、人生全般にわたる人生態度の障害に繋がり「生きにくさ」を生涯抱えてしまうことになると言われています。幼児期になると自分の好きなように環境(母親)をコントロールすることが出来ない事に気づき、母子一体感から母子分離の過程に差し掛かります。母親に「危ない」と叱られたり、おっぱいを噛んで「痛い」と拒絶される経験をすることで、自分を取り巻く環境が自分とは一体ではないことを学んでゆきます。この時期、自分の周りの環境を思い通りに出来ない事を経験してゆくため、自分がOKでない、他人(母親)がOKでないなどの感覚を抱き、乳児期に形成された基本的信頼に歪みが生じてきます。このような経験を通して、自分はOKである、他人はOKである、自分はOKでない、他人はOKでないという人生態度の原型が形成されてゆきます。

人生態度とは

 養育者や環境とのこのような交流の中で、母子一体感から自分と母親や環境は違う存在であること(母子分離)を乳児は学習してゆくと考えられています。母子分離を体得してゆく中で、子どもが「人はこのようなものだ」とか「こうやって生きてゆこう」という生きる方針を決める瞬間があります。この決断のことを幼児決断と言います。幼児決断は子供の理性によって行われるため、幼稚で拙い考え方ではあります。しかし、時に幼児が生き残るために必死の覚悟で行っている決断のため、行動を束縛する力が強く、大人になってばかばかしいとわかっているようなことでも、幼児決断による思考パターンや行動パターンに盲目的に従ってしまっているような場合があります。つまり、大人になってからもその人の行動を決定する物差しとして幼児決断が作用し、幼児決断がその人の行動や考え方の傾向に繋がっていることがあります。

幼児決断(ようじけつだん)

 

幼児決断

 母子一体感から母子分離を体得してゆく中で、子どもが「人はこのようなものだ」、「こうやって生きてゆこう」という生きる方針を決める瞬間がある。この決断のことを幼児決断と言う。幼児決断は幼稚で拙い考え方ではあるが、幼児が生き残るために必死の覚悟で行っている決断のため、行動を束縛する力が強く、大人になっても幼児決断による思考パターンや行動パターンに盲目的に従ってしまう場合がある。

 幼児決断の重要な要素にラケット感情があります。ラケット感情とは、子どもが親の愛情を得るために身に着けざるを得なかった“偽の感情”のことを言います。ラケット感情の主なものを ラケット感情と人生態度の表 で挙げています。

ラケット感情と本物の感情

 

ラケット感情

 子どもが親の愛情を得るために身に着けざるを得なかった“偽の感情”

 後悔、心配・不安、嫌悪感、優越感、恨み、焦り、虚無感など、本物の感情以外の感情

本物の感情

  幼い子供の時に感じた純粋な感情。自我の検閲を受けていない感情。本物の感情を表現することは「いまここ」での問題を解決することに繋がる。

 本物の感情は「怒り(mad)、悲しみ(sad)、怯え(scared)、喜び(glad)」の4つ。(子どもが感じるような身体感覚【落ち着いた、空腹の、疲れた、興奮した、うんざりした、眠いなど】を含む場合もある) 

 交流分析において、人間が持つ本物の感情(authentic feelings)は、「怒り(mad)、悲しみ(sad)、怯え(scared)、喜び(glad)」の4つだけといわれています(子どもが感じるような身体感覚【落ち着いた、空腹の、疲れた、興奮した、うんざりした、眠いなど】を含むと考える研究者もいます)。しかし、子どもは環境とのやり取りの中で、環境や養育者から見捨てられないようにするために仕方なく偽の感情であるラケット感情を身につけます。

 たとえば子どもがコップの水をこぼしたとします。子どもはコップの水をこぼして悲しいし、怒りの感情を抱く場面ですが、親から「またこぼして、反省しなさい」と叱られることがあります。この時、親から見捨てられたくない子どもは、くよくよするような後悔の感情を示すことで「次は気を付けなさい」と親から承認のストロークをもらい、「失敗したときは後悔する」という、偽の感情である“後悔”というラケット感情を身に着けます。このような親との関係が繰り返されると、失敗したときに“後悔”を示して親からストロークをもらおうとすることを幼児決断し、“後悔”というラケット感情を身につけると考えられています。

 ラケット感情は自分もOK、他人もOKであった人生態度から、自分はnot OKや他人は not OKといった人生態度を形成してゆくことに関係します。たとえば、“後悔”というラケット感情は、同じような体験をした時に後悔の念を示すことを繰り返すことによって、その人の“自分はnot OK”という人生態度を強化してゆくと考えられています。このような過程を通して人は、大人になってからもストレス状態に陥るとその人独特のラケット感情に浸り、人生態度の強化を繰り返してゆきます(ラケット感情と人生態度の表)。

 

ラケット感情と人生態度の表

 このようにしてラケット感情から確固とした人生態度を身につけてゆくのです。このラケット感情は、後述する心理ゲームにも関係してゆきます。心理ゲームは繰り返し行われる不毛な不快な感情のやりとりです。Aで気がついて、適切に対応しないと何度も不快なラケット感情を味わうことになってきます。

 自身のラケット感情に気が付くためにはラケット感情と人生態度の表を参考に、自分がよく味わうラケット感情は何かを探ることから始めます。ラケット感情は、本物の感情の代用感情なので、その裏には本物の感情が隠れています。自分がよく味わうラケット感情がどの本物の感情の代用感情なのかに気づくことで、ラケット感情を手放し、ラケット感情から自由になることを促すことが出来ます。