心理ゲームとは

 皆さんは、日常生活の中で、同じ人といつも嫌な感じで終わるやりとりを経験したことはないでしょうか。獣医療業務においても、ある飼い主との交流でどうしてもイライラしてしまい、最終的にはケンカになってしまうとか、ある病院スタッフとの関係の中でどうしても気持ちが沈んでしまうとかいうことが繰り返されているということをしばしば体験したことがあると思います。このような繰り返される不毛なやりとりは心理ゲームが関係していると考えられます。

 E・バーンは、著書“Games People Play”(1964)の中で、「心理ゲームとは、明らかで予測できる結果に向かって進行しつつある一連の相補的・裏面的な交流」と定義しています。心理ゲームの特徴は、①ある程度親密な間柄で繰り返し行われること②Aの自我状態がほとんど機能していないこと③not OKの人生態度を証明する、無意識に隠された意図があること④不快なラケット感情を伴う結末があること⑤役割の転換があることあげられま。心理ゲームを仕掛ける人(仕掛人)は、人生態度の「自分は not OK」や「他人は not OK」を有しており、心理ゲームによってその立場を強化し確認する目的を無意識的に持っています。また、濃厚な否定的ストロークを得られるため、孤独やさみしさからくるストローク飢餓を回避することが出来ます。そして、心理ゲームを行うことによって、後述する時間の構造化を行うことができ、退屈を埋めることができます。このような効能のため、ストローク飢餓に陥っており、第二から第四の立場のいずれかの人生態度にとどまりがちで、時間に余裕があり、Aを働かせることが不得意な人の周囲には心理ゲームが蔓延していることがあります。

 心理ゲームには仕掛人(Con)、乗る人(Gimmick)が登場します。仕掛人には、心理ゲームを行ってストロークを得て、自身のnot OKの人生態度を強化する無意識的な狙いがあり、乗る人には仕掛ける人を「助けてあげよう」といった乗せられる弱みがあります。仕掛人と乗る人の間で裏面交流に真の交流のある、見かけ上の相補交流(応答;Response)が行われているうちに、仕掛人と乗る人の間で迫害者(Persecutor)、犠牲者(Victim)、救援者(Rescuer)の役割の転換(Switch)が生じます。このとき乗る人の自我状態が急変し、交差交流が生じます。交差交流が起こったとたんに、仕掛人と乗る人の間で混乱(Cross-up)が生じ、状況の分別がつかなくなります。この混乱に伴い仕掛人、乗る人とも不快で嫌なラケット感情に浸ることになり、仕掛人、乗る人ともnot OKの人生態度を確認強化する結末・報酬(Pay off)を迎えます。このようにして仕掛人は乗る人を使って濃厚なストロークをもらい、自身のnot OKの人生態度を強化します(心理ゲーム「愚か者」のゲームの公式を例に)。

心理ゲーム 「愚か者」のゲームの公式