4つの人生態度

 人生態度「自分はOK、他人はOK」「自分はnot OK、他人はOK」「自分はOK、他人はnot OK」「自分はnot OK、他人はnot OK」の4つの態度に大きく分類されます。この関係を示した図をフランクリン・アーンスト(Franklin Ernst)のOK牧場(1971)と言います。

フランクリン・アーンストのOK牧場

 

 「自分はOK、他人はOK」は自己肯定・他者肯定の建設的な人生態度で、交流分析において人が目指すべき態度と考えられ、第一の立場とも呼ばれます。真の人間尊重の態度であり、共存共栄で平和主義的な考え方です。自分自身をありのままに表現することに躊躇することなく、粘り強く行動することができる立場です。ラケット感情に縛られることがありません。この立場に近づくことこそ、本来の人間の力を余すことなく発揮できる状態、すなわち真の自己実現に向かう状態だと言えます。

 「自分はnot OK、他人はOK」は自己否定・他者肯定の受け身で自己防衛的な人生態度です。第二の立場とも呼ばれます。自己を軽視し、自己に自信がないため、くよくよする、自己卑下するなどのラケット感情を抱きます。他者との交流で劣等感を感じ、ひどい時はうつ病や対人恐怖などの症状を引き起こすことがある、不安感が強い人生態度です。「自分はnot OK、他人はOK」は、自己肯定感を増すことに成功すれば、「自分はOK、他人はOK」の人生態度に近づくことができると考えられています。

 「自分はOK、他人はnot OK」は自己肯定・他者否定の排他的で、攻撃的な人生態度です。第三の立場とも呼ばれます。優越感やイライラ感のラケット感情が特徴的です。野心家、批判的で仮想有能感が強く、責任転嫁的な行動を示します。このため他者をコントロールしようとする傾向がみられることがあります。この自己肯定は、劣等感や他者との比較の上に成り立っていることがあり、「自分はnot OK、他人はOK」の人生態度をマスクし、自分を防衛するために身に着けた人生態度であるといえます。

 「自分はnot OK、他人はnot OK」は、自己否定・他者否定の自閉的で虚無的な人生態度です。第四の立場とも呼ばれます。敗北感、見捨てられ感、失望感といったラケット感情を抱きます。この人生態度は乳児期・幼児期に形成される基本的信頼感が、何らかの形(たとえば、虐待、体罰、けがなど)でその形成に不備を来し、養育者から肯定的ストロークが不足したために生じてくる人生態度です。「どうせ自分なんか」という幼児決断に伴うラケット感情により、自分が受けてもいい肯定的ストロークに気づかず、自閉的に空虚感に浸ってしまいます。また、愛情に対する欲求が強すぎ、与えられた肯定的ストロークにしがみつき、かえって相手の拒絶を招いているような人もいます。この人生態度にいる人は、「自分が存在すること」が無条件に肯定されることを自分に言い聞かせながら、現在浸っているラケット感情を身に着けた意味を自覚する必要があります。

 交流分析のゴールは第一の立場を目指すことです。しかし、第一の立場をずっと維持することは無理であり、人が生きるとき第一の立場から第四の立場を移り変わりながら揺らいでいるのが普通であると考えられています。人は、ある時は第二の立場、ある時は第三の立場、ある時は第四の立場の人生態度を生きています。ただ、いずれかの人生態度の立場を取りすぎる傾向があるのであれば、バランスよく時間の構造化が行われておらず、社会生活で支障を来すことになります。そこで、人は第二の立場から第四の立場の人生態度を揺らぎながらも、第一の立場にいる時間を多くすることを目指し生活することで自律性の獲得に近づけると交流分析では考えます。

 第一の立場を目指すとき、第四の立場の人生態度から急に自分を変化させることは難しいことです。第四の立場の人は自尊心や自己効力感を高めるために自分自身にストロークを与える(セルフ・ストロークする)ことでまず第三の立場を目指すことが自然です。第三の立場の人は他者を共感的に理解することに努めることで第二の立場を目指すことができます。そして第二の立場の人は自分も相手も肯定的に捉えることで第一の立場を目指すことができます。このように第四の立場の人は第三の立場を、第三の立場の人は第二の立場を、第二の立場の人は第一の立場を目指すことで、スムーズに自分の人生態度を移行できると考えられています。

 ここに示した人生態度の揺らぎは、環境や状況や体調の影響を受けるでしょうし、一日の中でもとどまることなく人生態度の揺らぎが生じていると考えられます。また、幼児決断ラケット感情、後述する人生脚本の影響でその人その人で取りやすい人生態度というものがあります。家庭では「自分はOK、他人はOK」でも、仕事や学校では「自分はOK、他人はnot OK」であることが生じてきますし、時間によっても人生態度は変化しているでしょう。生活の中で、人間関係で「何かうまくいかない」ということがあった場合、偏った人生態度に固着し第一の立場の人生態度をとれないことが関係していると考えられ、自身を取り巻く環境や状況や体調、幼児決断やラケット感情や人生脚本が関与していることが考えられます。そのことを自覚し、考え方や行動を修正し第一の立場を目指すよう心掛けることによって「自分はOK、他人はOK」の共栄共存の対人関係を構築することができます。