ディスカウント(値引き)とは

 様々なストロークの授受の中で、人はディスカウント(値引き)と呼ばれる行為を無意識に行っていることがあります。

 ディスカウントとは、自分、相手、状況の価値を軽視したり、その能力や成り行きを過小評価したりすること、つまり問題解決に関連する情報に気が付かずに無視することを言います。これは相手への無関心と愛の欠如を示す行動と考えられています。ディスカウントは①自分自身をディスカウントする②他人をディスカウントする③状況をディスカウントするという3つの領域で行われます。無意識のうちに行われていることが多く、本人が気が付いていないことがあります。つまり、人がディスカウントをしている時、自我状態Aの働きは抑制されていると言えます。

 ディスカウントという概念は、臨床心理学の中でも交流分析でのみ説明されているような大変ユニークでなおかつ交流分析の根幹になってくる概念です。様々な人間関係や社会問題の根底に関係していて、これは獣医療の問題においても例外ではありません。

 

ディスカウント(値引き)

 

・自分、相手、状況の価値を軽視し、その能力や成り行きを過小評価すること

 

・問題解決に関連する情報に気が付かずに無視すること

 

・相手への無関心と愛の欠如を示す行動のこと

 

・①自分自身 ②他人 ③状況 の3つの領域で行われる

 

・無意識で行われ気が付きにくい(Aが充分に働いていない)

 獣医療域で行われるディスカウントの例として、ペットに対して不適切な食べ物を与えて何度も何度も病気にする飼い主の例を挙げることができます。一見ペットが欲しがる食べ物を与えているということで、この飼い主はペットをとてもかわいがっているように見えます。しかし、不適切な食べ物と分かっていて、何度もペットを病気にしてしまう時は、ペットへの愛情によって食べ物を与えているわけではないことが疑われてきます。このような飼い主は、自身が可愛がっているペット(“他人”)と病気になるような環境を作るという意味で“状況”をディスカウントし、このことを重要視しない“自分”もディスカウントしていると考えられます。

 そして、この飼い主はディスカウントしている自分に気づいていないでしょう。無意識のうちにディスカウントしていると考えられます。おそらくこのような飼い主は、 “ペットの健康”を考えるよりも、“ペットが(不適切な食べ物を与えることででも)自分のほうを向いてほしい”と無意識的に望んでいます。普段の生活でのストローク不足を解消するため、ストローク供給源としてペットを飼っているのかもしれません。日常のストローク飢餓の影響でどうしてもペットの気を引きたいがために、不適切な食べ物を与えてしまう(ディスカウントしてしまう)のかもしれません。

 Aの働いていない飼い主のこのようなディスカウントの行動が続くことによって、ペットの健康が損なわれることに繋がる場合、獣医師は行動を起こす必要があるでしょう。獣医師は、ディスカウントしてペットを病気にしている飼い主に、ディスカウントに気づかせる関わりをする必要があります。飼い主のAに働きかける関わり(たとえば、ペットの気持ちを代弁するとか、本来のペットの可愛がり方を説明するなど)を取りながら対応してゆく必要があると考えられます。そして飼い主がなぜこのようなディスカウントをしてしまうのかということに心を配ることも、ペットと飼い主のケアのためには必要なのかもしれません。ひょっとすると、飼い主自身も必要なストロークをもらうことができない等のディスカウントを受けている、もしくは受けてきたために、ペットに対して同様なディスカウントを行ってしまうという可能性を考えることが出来ます。このようなことを考慮しながら診察をすることもこれからの獣医師は望まれるのかもしれません。