自分が望む交流パターンに変える

〜対話交流の3つの原則と交流のつなぎなおし方(オプション)

 対話交流には3つの原則があります。これを理解することで、自分の望む交流パターンで、相手とコミュニケーションできることがあります。

 一つ目は、相補交流は延々と続く可能性がある ということです。相補交流は、自分も相手も相手の反応が予測でき、望む反応をしてくれることを期待しています。対話をうまく続けようと考えるときはこの性質をあえて利用することも考えることができるでしょう。対話が続けば、お互いの緊張感は軽減し、信頼感を生み出すことに繋げられるかもしれません。

 二つ目は、交流が交差したとき、交差を受け取った人は交差した人が招いている自我状態に移行しやすいということです。たとえば怒った人を怒った場合(自我状態がCPにある人のACに対してCPから交差交流をした場合)、相手はACの自我状態に移行するように誘われたことなり、「ごめんなさい」と謝罪したりとか「何を言ってるんだ」と反動をかえしたりしやすいということです。このように交差交流の際、結果として対話は中断し、その後円滑に対話を再開させるときはどちらかもしくは両者が自我状態を移す必要に迫られます。この性質をうまく利用すると、相手を自分の取ってもらいたい自我状態へ誘導することができる可能性があるということになります。この性質を利用して交差したやりとりを繋ぎ直すこの方法をオプションと言います。もちろん交流分析の哲学が示す通り「人と過去はかえられない」ので、思い通りに人を操って他人をある特定の自我状態から反応するように仕向けることは不可能であり、出来ることはその自我状態から反応するようにと誘うことだけであることは指摘しておきます。

 三つ目は、裏面交流への反応は言語レベルではなく非言語レベルで行われる ということです。非言語レベルのやりとりに気づくには、声色、表情、姿勢、目線、態度、状況等の情報から直感的に言葉レベルの情報との不一致に気が付く必要があります。言葉とその意味が一致しない裏面交流は、不快を感じさせる交流になっていることがあります。後述する心理ゲームラケット行動はまさにこの裏面交流が対話のメインになっています。この不快に感じる裏面交流から抜け出るには、①片方または両方の自我状態が実際に変化すること②その交流が交差すること③話題が変わることなどの条件が必要になります。

 ここに示した対話交流の3つの原則は、獣医師‐飼い主の交流を理解したり、交流パターンを自分が望むように変化させたりするときに役立つ対話分析の特徴です。

交流のつなぎなおし方 〜オプションの実際

オプションの例2

 

S:獣医師「この子の病気は検査結果から重大な異常があり亡くなる可能性があります」

    (A→A)

R:飼い主「えー!亡くなるなんて耐えらえない。何とかしてもらえませんか」

    (C→P)

 

獣医師は先の例と同じようにAから検査結果と予後について話をしているが、飼い主は自身のCから感情を合わせた表現で強者である獣医師のPに対して助けを乞うことで交差交流が生じている。

飼い主

獣医師

オプションの例1

 

S:獣医師「この子の病気は検査結果から重大な異常があり亡くなる可能性があります」

    (A→A)

R:飼い主「亡くなるとはどういうことだ。どうにかならんのか」

    (P→C)

 

獣医師が検査結果から冷静な目で飼い主のAに向けて対話を行ったが、飼い主がPから威圧的に獣医師のCに反応したため交差交流が生じている。

飼い主

獣医師

 どちらの交流においても交差交流が発生し、コミュニケーションが中断したり、不穏で不快な交流に繋がる兆しが生じています。獣医師は交差した交流を繋ぎ直すためにまず自身の自我状態を変化させ、相手が誘っている自我状態から相補交流を試みるようにします。

オプションの例1

 

(飼い主「亡くなるとはどういうことだ。どうにかならんのか

    (P→C)

 

S:獣医師「ご心配させて申し訳ありません」

    (C→P)

 

飼い主のPから発信した交流を獣医師のCからPへ相補交流として返している。

飼い主

獣医師

オプションの例2

 

(飼い主「えー!亡くなるなんて耐えらえない。何とかしてもらえませんか」

    (C→P)

 

S:獣医師「ご心配ですね。」

    (P(NP)→C)

 

飼い主のCから発信した交流を獣医師のP(NP)からCへ相補交流として返している。

飼い主

獣医師

オプションの例1,2

 

S:獣医師「ご心配になるお気持ちはよくわかります。今後のケアのことで混乱されることもあると思います」

    (獣医師A → 飼い主C の交差交流)

 

獣医師が相補交流で返した後、獣医師は A→C の交差交流を用いて飼い主の心情を受け止める、共感する交流を行っている。この交差交流で飼い主の自我状態をCに誘うことができる。このような交流は、飼い主が自分の感情を充分に味わうことを促し、自分の本当の気持ちに気づく機会を得ることにつながる。

飼い主

獣医師

 オプションの例1、2ともに飼い主の反応に対して相補交流で受けることで、相補交流の特徴によってスムーズな対話に戻っています。

 この後、オプションの例1、2とも、交差交流の特徴を用いて次のように交流のつなぎなおしをすることができます。

オプションの例1,2

 

S:獣医師「ただ、心配されていてもこの子の問題が解決するわけではありません。今ここでできることを一緒に考えていきませんか。」

    (獣医師A → 飼い主A の交差交流)

 

さらに獣医師が A→Aの交差交流で飼い主をAの自我状態に誘うことで、飼い主のAを活性化し、飼い主が今ここの問題を解決してゆくための生産的な会話につなげることができる。

飼い主

獣医師