各ストロークの特徴と効能

 人は本来他人と接触を持ったり、承認されたりストロークを欲する欲求を持っていて、ストロークが不足すると心身の成育さえ妨げられるといわれています。このため、人は、無ストローク状態(存在の無視)によってストローク飢餓になることを最も恐れます。この無ストロークを避けるために、人は時に否定的ストロークでもよいからストロークを獲得しようとします。いじめられることが分かっているのにいじめっ子のグループと一緒に行動しようとする子供がいます。これは、人が無視されることを嫌い、認められることに常に飢えているからであり、肯定的ストロークを得られない時に否定的ストロークでもいいから得ようとするためであるといえます。 

 条件付き・無条件ストロークには肯定的ストローク・否定的ストロークの両者があります。条件付き・無条件のストロークは次のような特徴があります。

 人が最も欲する、そして人を健全に成長させるストロークは無条件な肯定的ストロークです。ストロークを受ける人の自己肯定感(自分は自分でいいという感覚)や基本的信頼感(世の中は安全で希望に満ちているとする漠然とした感覚)、自分もOK他人もOKの人生態度(後述)を育みます。

 条件付きの肯定的ストロークは、一般的な子どものしつけに用いられますが、このストロークは基本的に発する人が他者を操作する目論みを含んでいます。親から「勉強してえらいわ」といった条件付き肯定的ストロークしか与えられないで育つと、子どもは親から操作されることが当たり前となります。このため親の顔色をうかがうために行動したり、何かの“ひも付き”でないと行動しない子供になってしまいます。つまり、条件付きの肯定的ストロークは、多用すると人の自発性を損なうような効果を与えてしまう弊害があります。

 これとは反対に、条件付き否定的ストロークは、しつけのために有効な場合があります。たとえば「物を大事にしないとダメ」というのが条件付き否定的ストロークです。否定的ストロークなので言われた側はいい気持ちはしませんが、「物を大事にしない」行動を否定されただけで、その子の存在を否定したわけではありません。その行動に非があると感じるなら、言われた側がそのストロークを受け入れやすくなります。否定的ストロークでもその人の人格を否定することにはつながらないため、その子の自律性を障害しないのです。

 もっとも害のあるストロークは無条件の否定的ストロークです。「君はダメだな」「あなたのせいだ」など、その人の存在を否定するストロークです。このストロークはディスカウントを含み、他者の心身の成長に有害な影響を与えます。子供が親からこのストロークを日常的に受けると、自己肯定感、基本的信頼が育まれません。また、人は無ストロークであるよりも無条件の否定的ストロークであってもストロークを欲します。この結果として罪を犯すなどして、人の目を引こうとするような大人になることもあります。

 否定的ストロークは裏面交流の形で現れることも多く、発信者の意識に上っていないこともあります。この一例が“からかい”です。いじめ問題でも苛めている側は、“からかった”“いじった”と思っていても、裏面交流で“お前はバカだ”という無条件な否定的ストロークを与えていることがあります。このようなストロークは取り返しがつかないくらい人を傷つけることがあります。

 無条件の否定的ストロークを与えられた影響は人生の中で延々と反復され続く可能性があります。親から虐待を受けた子供が成長し親になった時に自分の子どもに虐待を加える傾向があることを虐待の世代間連鎖といいますが、虐待を受けた(つまり無条件の否定的ストロークを日常的に受けた)心の傷は大人になっても癒えないことを示しています。このように、日々の生活で用いられているストロークの傾向は人生全般に多大な影響を及ぼしてゆきます。

 ストロークの種類や質は、ストロークを受け取った側が決定するという原則があります。これは、仮に「ありがとう」「すごいですね」と肯定的ストロークを投げかけたつもりでも、相手が「皮肉を言って」「本当にそう思っているの」と肯定的ストロークとして受け取らないことがあるということを言っています。あくまで、受け取った側の受け取り方でストロークの質は決まってきます。この例でもあるように、ストロークの受け取り方は相手の性質が関係してきます。仮に肯定的ストロークで相手をほめても、それが伝わらないことがあるのはこのためです。

 この例のように肯定的ストロークを素直に受け取ることができない性質というのは、その人の持つ人生態度人生脚本が関係しているとが考えることができます。交流分析の理論では、肯定的なストロークはそのまま肯定的ストロークとして受け取ることが望ましいことを説明しています。ストロークを素直に受け取ることが、結果的に自身の自律性を育む結果につながると考えられるからです。

 ここまで述べてきたように、ストロークの概念は日常生活だけでなく、獣医療などの飼い主や病院スタッフとのコミュニケーションの時に応用可能です。また、人がペットを飼う理由に大きく関わっていることが考えられます。

ストロークの質を決めるのは受け手