エゴグラムを思い通りに変容する

 エゴグラムは、自分の人生に生かすために自分の思うように変容させることが可能です。その際3つのポイントがあります。

 まず、過剰に働いている自我状態の機能は、その人となりを醸し出しているその人の性格そのものです。この機能を下げるということは、非常に難しいことです。そこで、仮に過剰に働いている自我状態の機能があったとして、それを下げる努力をするのではなく、その機能で生じる否定的な側面を肯定的な側面に置き換えて表出するように行動を変化させてゆきます。すなわち、簡易エゴグラム傾向チェック表における〈過剰な働き〉の設問に示された各自我状態の特徴は自我状態の否定的な側面を表出しているので、〈本来の働き〉の設問に示された各自我状態の特徴に変換して表現することで、過剰に働き否定的に表出されている自我状態を相手が受け入れやすい形で表出することができるということです。たとえば、CPが高く独善的であれば、責任感があるという肯定的な面を表出するように努める、また、FCが高く自己中心的であれば、やる気があるという肯定的な面を表出するように努めるといった行動の変化を行うということです。

 2つめに、低い自我状態の機能をトレーニングによって活性化させるということがあります。たとえばNPが低ければ、毎日他人をほめることを日課にするとか、ACが低ければ「申し訳ありませんが」という一言を加えてお願い事をするようにするといった行動の変更を行うことで低い自我状態の機能を活性化するように努めます。交流分析では「エネルギー一定の法則」という考え方があります。これは、「人間が有する精神的エネルギーは一定である」という仮説です。すなわち、ある自我状態の機能をあげる努力をすると過剰に働いて否定的な働きをしている自我状態の機能を目立たなくすることができると考えられています。

 3つめは、適度にAを働かせる必要があるということです。Aを働かせないと自我状態の機能を変化させるように自分の行動や言動をコントロールすることができません。また、エゴグラム自体を解釈することも出来ません。Aが適度に働いていれば、TPOをわきまえて自我状態の機能を表出することができるので、過剰に働く自我状態の機能の否定的な部分を表出させずに済みます。このようなことを踏まえて、自分にとって不適切と考えられるエゴグラムを持っていても、自分の人生やTPOに合わせて、自分の思うようにエゴグラムを変容していくことができます。

 自我状態の機能は、生活場面や相手によって変化しますので、ある場面で測定され判断されたエゴグラムが必ずしもその人の特徴をつかみきっているとは限りません。しかし、説明してきたとおり自分や相手を理解するための助けにはなります。質問紙のエゴグラムによって自分のエゴグラムを知ること、行動的診断、社交(社会)的診断、歴史的診断、現象的診断の方法によって相手のエゴグラムを類推すること、そして、エゴグラム変容の方法で自分の否定的な自我状態の機能を変容することは、円滑な人間関係を形成する上で有用となるでしょう。社会に役立つ獣医療を提供する上で、利用者である飼い主と円滑な人間関係を築くことは最初の一歩であり、このために、自我状態の概念やエゴグラムは大きな力になってくれることが期待できます。

エゴグラム変容のポイント

①過剰に働いている自我状態の機能を下げるのではなく、その機能で生じている否定的な側面を肯定的な側面に置き換えて表出するように行動を変化させる。

CP過剰(独善的、押し付け)→CP本来(責任感、正義感が強い)

NP過剰(甘やかし)→NP本来(養育性、やさしさ)

A過剰(打算的、機械的)→A本来(計画性、思考性)

FC過剰(わがまま、勝手)→FC本来(明るさ、のびのび)

AC過剰(依存、遠慮)→AC本来(協調性、従順)

というように表現方法を変えてみる。

 

②エネルギー一定の法則に基づいて、低い自我状態の機能をトレーニングによって活性化させる。このことによって過剰に働いて否定的な働きをしている自我状態の機能を抑制する。

トレーニング例

 CP不足:日々の生活の中で好き嫌い、善悪などの自分の考えをはっきりさせ、曖昧にしない。ルールや慣習に従う。

 NP不足:挨拶や声掛けを行い、人に興味を持つようにする。相手をほめたり、笑顔で話しかけることを心掛ける。

 A不足:人間関係や出来事で問題が生じた場合、情報を集め、その原因を分析し、最良の対処方法を分析し実行する。

 FC不足:自分が楽しいと思うことを積極的に行う。自分を甘やかせる。趣味や習い事に没頭する時間を持つ。

 AC不足:「すみませんが」と言って話しかける。相手の言うことをまず聞くようにする。自分の気持ちを抑える。

 

③適度にAを働かせ、それぞれの自我状態の表出をTPOに合わせてコントロールするようにする

適度にAを働かせる とは

エゴグラムを用いて今の自分を知ること + 相手や状況を理解すること + TPOに合わせて必要な自我状態の機能を表出できること